供給停止品の油圧エレベーターはリニューアルが必要?判断するためのポイント

エレベーターの保守契約を結んでいると、「まだ動いているから大丈夫」と感じてしまうことは少なくありません。

特にフルメンテナンス契約であれば、何かあっても修理対応してもらえるため、安心して運用されている建物オーナーや管理者の方も多いと思います。

実際に、故障しても直してもらえたという経験があると、「今回も大丈夫だろう」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、エレベーター部品供給停止となった油圧エレベーターについては、少し事情が変わります。

重大部品が故障した場合、そもそも修理用の部品が存在せず、復旧そのものができない可能性があるためです。

結論から言うと、部品供給停止となっている油圧エレベーターは「壊れてから考える」のではなく、「動いているうちに更新を検討する設備」と考えておいた方が安全です。

 

この記事では、油圧エレベーターの部品供給停止とは何か、その背景と実際に起きた事例をもとに、リニューアル判断の考え方を現場目線で解説します。

「まだ動いているけれど、本当に今リニューアルすべきなのか」

そう悩んでいる建物オーナーや管理者の方の参考になればと思い、実例を交えて紹介します。

供給停止となった油圧エレベーター部品が実際に故障した事例

供給停止品とは、メーカーが主要部品の製造や在庫供給を終了している機種・部品を指します。

エレベーターは長期間の使用を前提に設計されていますが、電子制御部品や油圧機器などは永続的に製造されるわけではありません。メーカーが製造ラインを終了し、在庫がなくなると、その部品は供給停止となります。

共通するリレーであれば代替が可能な場合もありますが、油圧エレベーターの特徴であるポンプやバルブといったその機種でしか使用されていない中核部品が供給停止となっている場合、状況は大きく変わります。

 

実際に、油圧制御バルブが故障した現場がありました。

その物件は他社のメンテナンス会社と契約しており、現地対応ではなく、管理会社から電話で相談を受けたケースでした。

「テナントの引っ越しが決まっていて、どうしてもエレベーターを使いたいんです」

電話口の担当者の声はかなり焦っていました。

 

状況を確認すると、油圧制御バルブが故障しており、エレベーターは停止状態。
すでに部品は供給停止となっている機種でした。

中古部品でも何でもいいので直せないか、と相談されましたが、新品はすでに製造していません。
運悪く珍しいタイプのバルブを使用していたため、同型の中古部品も見つからず。

復旧は難しいとお伝えしましたが、「ダメ元でいいのでオーバーホールを試してもらえないだろうか?結果に関わらず費用は払います!」と懇願され、保証はできませんが、やるだけやってみるということになりました。

正直、このようなケースは初めてで、結果がどうなるのか私にも分かりませんでした。

 

結果として復旧には至りませんでした。

最終的に、そのエレベーターはリニューアルまでの間、約半年間 停止することになりました。

 

その後の引っ越し予定のテナントがどう対応したのかまでは分かりませんが、手運びで搬入するか、スケジュールを変更するか、値下げで折り合いをつけたのではと予想します。

原因が分かっても、部品が存在しない以上、我々にできることは少ないんだなぁと実感しました。

 

正直に言うと、私自身も「供給停止」という言葉自体は以前から知っていました。

しかし、実際にその影響でエレベーターが長期間停止してしまうケースを目の当たりにしたのは、この案件が初めてでした。

それまでは「部品がなければ修理が難しい」という程度の認識でした。

これまでは、どこかから部品が見つかったり、代替部品で対応できたりと、一週間くらいで何とか復旧できるケースが多かったのです。

今回の件で建物の運用そのものに影響が出る問題になることを実感しました。

バルブイメージ

バルブイメージ

油圧エレベーター特有のリスク

油圧式は、ポンプや制御バルブなど油圧系統が中核を担っています。これらが健全であれば安定稼働しますが、重大部品が故障すると代替が効きにくい構造です。

現場感覚では「まだ動く」機械も多くあります。しかし問題は、「重大故障が起きたときに対応できるかどうか」です。

定期的な作動油交換やフラッシングで延命は可能ですが、供給停止部品の問題そのものは解決できません。

以前は機械室を屋上ではなく、地下や1階に設置できる油圧エレベーターのメリットがありましたが、現在はそもそも機械室を必要としないエレベーターがあるため、新規油圧エレベーターの製造はありません。

 

さらに油圧機種では、油漏れや油流出のリスクもあります。

以前、地下を通る配管に継続的に水滴が落ち、腐食が進行。結果として配管に穴が開き、約200リットルのオイルを回収する事態になりました。

幸い居室被害はありませんでしたが、条件次第では二次被害に発展していた可能性もあります。

油圧機種は静かに稼働し続ける一方で、経年劣化が進むとリスクが顕在化しやすい側面も持っています。

油圧配管腐食イメージ

油圧配管腐食イメージ

油圧エレベーターをリニューアル検討する30年という一つの目安

使用状況や環境によりますが、現場では築後約30年前後の油圧機種で、供給停止や主要部品問題が顕在化する例が増えています。

油圧エレベーターは1980〜1990年代に中低層建物で多く採用されました。その後、1998〜1999年頃から機械室レスのロープ式エレベーターが普及し始め、油圧式の新設は徐々に減少していきました。

そのため現在では、築30年前後となる油圧機種が多く存在し、部品供給や設備更新が現実的な課題となっています。

重要なのは、「まだ動いている」ことと「安心して運用できる」ことは別だという点です。

供給停止品の場合、故障=即修理とは限りません。

・部品が存在しないため交換ができない
・代替部品での対応も難しい
・オーバーホールでも復旧しない可能性がある

その場合、リニューアル完了まで停止という選択肢しか残らない可能性があります。

リニューアルが進まない理由

更新が進まない背景には、いくつかの要因があります。

  • 予算の問題
  • 管理組合やオーナー間の合意形成
  • 人手不足や資材不足
  • 工期の問題

ロープ式の場合、機械構造を活かし制御盤のみを更新する短工期リニューアルが可能なケースがあります(事前調査は必要)。

一方、油圧機種のリニューアルでは構造そのものが変更になります。

既存の油圧ジャッキ構造からロープ式の巻上機構へ変更するため、ガイドレールの改修や機械設備の変更が必要になる場合もあり、工期や費用がロープ式更新より大きくなる傾向があります。

こうした事情が、「検討中」の状態を長引かせる原因になっています。

 

管理者が確認すべきポイント

油圧エレベーターの更新を判断する際、最低限確認しておきたいポイントがあります。

特に供給停止となっている機種の場合、故障してからでは対応が難しいケースもあるため、事前に状況を把握しておくことが重要です。

  • 主要部品が供給停止になっていないか
  • リニューアル計画が具体化されているか
  • 竣工から30年が経過していないか

主要部品が供給停止になっていないか

まず確認したいのは、現在使用している機種の主要部品が供給停止になっていないかです。

油圧エレベーターでは、制御バルブや油圧ポンプなど、その機種専用の部品が使われていることが多く、これらが供給停止になっている場合、故障時の対応が非常に難しくなります。

部品が供給停止となっている場合でもすぐに故障するわけではありませんが、一度重大部品が故障すると復旧手段が限られるため、早めに更新計画を検討する必要があります。

リニューアル計画が具体化されているか

更新の必要性を理解していても、実際には予算や合意形成の問題で計画が進まないケースも多くあります。

しかし、供給停止機種の場合は「故障してから検討する」のでは遅いことがあります。

更新工事には設計、見積、管理組合の承認など多くの準備が必要になるため、少なくとも更新時期の目安や予算計画だけでも決めておくことが重要です。

竣工から30年が経過していないか

一般的にエレベーターの更新検討時期は20〜30年と言われています。

特に油圧エレベーターは1980〜1990年代に多く設置されているため、現在では更新時期を迎えている機種が増えています。

30年を超えている場合は、部品供給や機械劣化の観点からも、一度リニューアルの検討を始めるタイミングと言えるでしょう。

現場の感覚としては、油圧エレベーターが供給停止となっている場合、「いつか止まる可能性がある設備」として扱われることが多くなります。

すぐに故障するとは限りませんが、重大部品が故障した際に復旧手段が限られるためです。

そのため、まだ正常に動いている段階で状況を確認し、更新計画を検討しておくことが重要になります。

まとめ

油圧エレベーターが30年を超えている場合、たとえ正常稼働していても、限界が近づいている可能性があります。

供給停止となってから慌てるのではなく、動いている今のうちに判断材料を整理することが、長期停止を防ぐ現実的な対策です。

「まだ動く」ではなく、「何かあったときに対応できるか」。

その視点で、一度リニューアルの必要性を検討してみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました